こんにちは、みのりです🌿
最近、大学や研究機関で行われている「女性限定公募」や「女性を優先する採用」について、SNSなどで話題になることが増えてきました。
これは、女性研究者の比率が依然として低いアカデミアの現状を変えようとする、アファーマティブ・アクション(積極的格差是正措置)の一環として行われているものです。
私は現在、博士課程に在籍する女子学生です。
この記事では、そんな私が「女性限定公募」について感じてきたこと、そしていま考えていることを率直に書いてみたいと思います。
これは、誰かの意見を否定するものではありません。
あくまで一個人の視点から、いまの制度の中で感じる“違和感”や“モヤモヤ”を記録したものです。
私の立場:制度の理念には共感する。でも、現状の運用には反対です
アファーマティブ・アクションの意義は理解している
アカデミアにおける女性の割合が依然として低いこと。
その状況を変えるために「女性限定公募」という制度があること。
今は過渡期であり、将来の多様性を作るためにこうした制度が必要であるということ。
こうした考え方には、私も共感しています。
ただし、今の制度のかたちは、むしろ不安や疑念を生んでしまう
問題なのは、その「理念」が実際現場でどう受け取られ、どんな影響を与えているかです。
制度そのものではなく、制度が作る“見えない空気”や“疑念の視線”が、むしろ女性研究者自身の立場を揺らがせてしまっているように感じることがあります。
そう思う理由
理由1:制度利用者の努力や実力が「性別で得たもの」と見なされるかもしれない
SNSなどで、こんな意見を見かけたことがあります。
「女性限定枠でポストを得た人って、実力じゃなくて性別で選ばれたってことでしょ?」
最初はショックを受けました。そんなふうに思う人がいることが、単純に悔しかったからです。
でも同時に、自分自身も“そう思ってしまうかもしれない”という怖さに気づいてしまいました。
たとえば、もし将来制度を利用してポストに就けたとしても——
「これは本当に自分の実力で選ばれた結果なんだろうか」
「もし男性だったら通っていなかったのでは?」
そんなふうに、自分で自分の努力を疑ってしまうのではないかと不安になります。
そして、そんなモヤモヤを抱えたまま、これから数十数年と研究を続けていけるのだろうか。
今の私にとって、それは大きな心配の一つです。おそらく、同じ気持ちを抱えている他の博士女子学生もいるのではないでしょうか。
理由2:「比較的恵まれた立場」の女性にしか制度が届かない
私は、ありがたいことにこれまでの研究生活の中で、「女性であることで不当に扱われた」と感じたことはありませんでした。
でも、そうではなかった女性研究者がいることも、私は知っています。
たとえば、私の知人の中には、博士進学を予定していたにもかかわらず、指導教員からのセクハラが原因で進学を諦めた方がいます。
そうした方々は、そもそもこの制度の対象になる“入口”にすら立てていないのです。
そう考えると、今、女性限定公募の制度を利用できるのは「比較的恵まれた立場」にある人たちだけという構造にも、疑問を感じてしまいます。
理由3:制度が「男女の対立構造」に見えてしまうリスク
女性枠があることで、「男性の枠が減る」と感じる人が一定数いることも事実です。
本来は多様性の推進を目的とした制度なのに、それが嫉妬や不信の温床になってしまうとしたら、本末転倒だと思います。
実際、SNSなどでは、
「男性のチャンスが奪われる」
「女性だからというだけで採用されやすい」
といった声が見られることがあります。
こうした反発が広がれば、制度の本来の目的が達成できないどころか、かえって女性研究者への風当たりが強くなるという逆説的な構造があるのでは、と感じています。
「枠」ではなくフェアに挑戦できる環境が必要
本当に必要なのは、性別で線を引いた“枠”ではなく、
まずは誰もがフェアに挑戦できる“土台”を整えることだと思います。
たとえば:
- 妊娠・出産や育児と研究の両立を支える制度
- ハラスメント防止と信頼できる相談体制
- 応募条件・評価基準の明文化と透明化
こうした取り組みこそが、すべての研究者にとって必要なのではないでしょうか。
こうした制度が整えば、女性にとって研究を続けやすい環境になるのはもちろん、
育児や介護などを担う男性研究者にとっても、大きな支えとなるはずです。
制度をより良くするために:制度の目的と役割を明確に
女性限定公募の制度が今後も続いていくのであれば、個人的なアイデアとして、次のような仕組みがあってもいいのではないかと考えています。
「女性限定公募で採用された人は、女性研究者のすそ野を広げるための活動(例:高校での講演、若手女性へのメンタリング等)に一定以上関わる必要がある」
もちろん、これを義務として課すことには慎重であるべきだと思います。
「女性にだけ追加の業務を強いるのか」といった批判が出る可能性も理解しています。
それでも、こういった役割を設けることで「この制度はなぜ必要なのか」「どう社会に還元されているのか」が可視化されれば、制度に対する誤解や不信も和らぐのではないかと感じています。
また、利用者自身も、支援を受けた立場として一定の責任があるとも思います。
その恩恵を自覚し、次の世代につなぐ意識を持つことは、制度の意義をより確かなものにし、社会全体にとっても前向きな影響を与える一歩になるのではないかと思います。
おわりに
女性限定公募に助けられた方がいることも、
今は過渡期でこうした制度が必要であることも、私は理解しています。
これは誰かを批判したいわけではなく、
「一女子博士学生である私が、今感じていることを、正直に記録した」だけです。
いつか自分が制度に応募する立場になったとき、また違った視点で考えるかもしれません。
でもいま私は、「このモヤモヤは、きっと私だけのものじゃない」と思うからこそ、こうして言葉にしてみました。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
これは議論を煽るための投稿ではありません。「こんな風に感じる人もいるんだな」とどうか寛容に受け取っていただけたらうれしいです。
もしこの記事が気に入っていただけたら、今後も博士課程女子学生の日常やモヤモヤについて発信していけたらと思っています。
ぜひまたブログやX(Twitter)でお会いできたらうれしいです☺️
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